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後編 月足(ローソク)だから見えてくる大局とトレンド

チャートを分析して「将来を当てよう」という発想にはムリがあります。将来を当てることが可能ならば、「売り」「買い」という真逆の価値観で価格が決まるマーケットは、そもそも成立しません。
 
売買に参加して価格形成に一役買っている者が価格の将来を当てるという発想そのものを否定するのが、「相場技術論」の出発点となる大切な考え方です。

 

前編 日足の組み合わせは再現性に乏しい

 

後編 月足(ローソク)だから見えてくる大局とトレンド

 

4.月足(つきあし)

 

◆月足(ローソク足)の描き方

月足は、1カ月間の値動きから「始値」「高値」「安値」「終値」の、いわゆる4本値(月間高低)を出し、それを1本の足(あし)として描きます。12本で1年を表現できるので、長期の上げ下げを見るために使います。
 

月初の価格(初日の寄付)と月末の価格(最終日の終値)を比べて、上がっている場合は白抜きの四角を描きます。これを、「陽線」(ようせん)といいます。
月末のほうが安い場合は黒で塗りつぶした四角を描き、「陰線」(いんせん)と呼びます。陽線でも陰線でも、この四角形の部分を「実体」と呼びます。
 
「高値」と「安値」は、日々のザラ場(日中の個別の売買)の高値と安値を採用します。これを、実体の上下に線で書き加えます。この部分を「ヒゲ」と呼びます。
1カ月の間に、例えば「大きく上げたあと、だらけてしまった」場合は、長い上ヒゲ(うわひげ)ができます。逆に「大きく下げたあと、月末には戻していた」場合、長い下ヒゲ(したひげ)を描くことになります。
長いヒゲが多い場合(上でも下でも)、その銘柄は「値動きのサイクルが短い」「値動きが荒い」と評価するのがふつうです。
 
 

 

下の図は、1カ月間の値動きとローソク足(陰陽足)を対比したものです。これほど単純な値動きばかりではありませんが、ジグザグとした細かい動きがローソク足におさめられる過程がよくわかると思います。

 

 

標準的には、実体を2mm幅で描き、次の足との間は実体部分に1mmのすき間ができるようにします。ですから、1年で36mm右方向に進みます。
 

 

◆月足の見方

この、白抜きの「陽線」と黒塗りの「陰線」で表現する形式を陰陽足(いんようあし)といいますが、形がローソクに似ていることから「ローソク足」とも呼ばれています。
ちなみにアメリカでもローソク足を見る人は多く、「ローソク」を訳して「Candle stick chart」と呼んでいます。
 
陰と陽で表現し、なおかつ1本の線に4つの価格要素(「始値」「高値」「安値」「終値」の4本値)が含まれているので、意外と情報量の多いチャート形式です。
 
その情報量を利用して、いろいろな見方が生まれます。1本ごとの形で強弱を判断したり、2本以上の組み合せ(線組み=せんぐみ)でトレンド転換を考える経験則や予測法があります。
 
しかし基本は、「トレンドを見る」ことです。
1カ月の間には約20日の立会がありますから、例えば「月末の価格だけ」を線で結ぶようなチャートは情報が少なすぎてしまいます。ですから月足は、必然的にローソク足で描きます。
しかし、「陰線と陽線」「ヒゲの長さ」などから細かい部分を見て「当てよう」とするのではなく「上げ」「下げ」「保合(もちあい)」というトレンドを考えてください。大切なのは、トレンドとトレンドの変わり目を強く意識することです。
 
 
そのほかに、上の例よりももっと具体的な形を見るというアプローチがあります。
線を1本ずつ見て、そこで展開された売買をドラマ的に分析しても意味はありませんが、集合形で見たりトレンドラインを見つけることで、前述したトレンドの変化点を探るための情報を得ることができます。
「秘密のサインを見つけよう」といった発想で形にばかり目を向けると、“お遊び”のチャート分析になってしまいがちです。基本は「単純にトレンドを見る」ことです。しかし、集合形やトレンドラインを見ることで、より実践的になります。
 
トレンドラインができた場合、そのトレンドラインを抜く動きがトレンドの変わり目です。
価格の変動は意外と激しいものなので、図で示したようにラインを引くことは、なかなかできません。
特に三角形は、まれにしか出現しないと考えてください。しかし、はっきりとラインが見えたときは判断の大きなヒントとなります。
 
しかし、無理やりにラインを引いてしまうケースが多いように思います。「ラインを引かなくてもラインがくっきりと見える」ときにだけ、これからの値動きを示唆するヒントがあるということを忘れないでください。
 
 
 
くどくなりますが、これらの「形」はチャートの補助的な見方です。いずれも底型、つまり底練りの期間が終わるときにみられるものですが、安値圏に到達し、高値の因果玉(しこり玉)の整理が進むのに十分な日柄(期間)が経過していることが前提です。
日柄が経過していないのに「形」を探してしまうと、「木を見て森を見ない」ことになってしまいます。

 

 

5.まとめ

 

◆チャートを見るときの三原則

前述したように、予測は当たりません。少なくとも、「予測は当たらない」ということを前提にして売買を考えるのが、相場技術論です。
しかし、周囲の情報に惑わされずに自分の売買をコントロールするためには、チャートなどで値動きを見てしっかりとした予測を立てる必要があります。予測は、「次の一手」を考えるための大切な判断基準なのです。
 
チャートを見るときに、細かい部分を見すぎないようにするべきだと書きました。
チャートは、次の3つのことを基本に観察してください。
 
  1. 傾向を見る
    トレンドが上向きか下向きか、保合なのか、変わり目に到達しているのかどうか、など。
  2. 形を見る
    定期間の形をトレンド判断の材料にすることが基本です。
  3. 勢いを見る
    そのトレンドが強力なのかどうかを見ます。だから、タテヨコの比率が大切なのです。

 

 

◆チャートは道具のひとつ

チャートは、とても便利な道具です。便利すぎるので、「チャートが将来を確実に示している」「ひとつのチャートにはひとつの答えしかない」と考えてしまいがちです。
昔はチャートを盲信する人を「ケイ線屋」と呼び、そういう人たちを揶揄(やゆ)した次のような歌がありました。
 
 ケイ線屋、足を引き引き、足を出し
 
「足を引く」はチャートを描くことです。最後の「足を出す」は、大損して資金以上の損を抱えてしまうことです。
チャートは自分で作成した道具のひとつで、判断の基準です。結果をコントロールするのは、そのチャートを使う自分自身です。チャートの適切な使い方は、自分自身の創造性だけです。

 

◆売買に適したチャートを使う

「当たるチャートはどれですか?」という質問をする人がいます。この質問の答えは、存在しません。理由は、これまで述べた通りです。
売買で利益を上げることが目的なのですから、自分自身の売買法に適したチャートを必要最低限で使うことをオススメします。
「日足=ローソク足」と決めつけている人もいますが、流れを見るためには終値の折れ線が使いやすいでしょう。ローソク足は、情報過多になりがちなのです。しかし、ローソク足を積極的に使って予測を立てていく売買手法もあります。
 
チャートの種類を考えるときは、個々のチャートの優劣ではなく、自分の売買に適したものを選ぶことが重要です。また、チャートを道具のひとつと位置づけ、自分の創造性を上手に生かすための使い方を考えてください。

 

6.底型・天井型111例

 

◆FAI規格の“保存版”月足チャート集

  • FAIクラブで過去に選定した中から抜粋した111銘柄
  • FAI規格のタテヨコ比のまま50%に縮小したA3サイズ
  • 期間は2001年1月~2015年8月
  • 底練りの様子とともに、立ち上がっていく状況を確認できる

◆値動きを捉える“変動感覚”を磨くツール

このチャート集の目的は、主にFAI投資法で重視する安値圏における月足の形を見ることです。安値圏に到達したあとの整理の期間、および上昇トレンドへの立ち上がりを見て、変動感覚を向上させることが狙いです。
 
多くのチャートは、タテヨコ比を無視した表示なので、感覚を養う上では大きなマイナス面があります。タテヨコ比を考えない表示というのは、顔写真でいえば「丸顔なのか面長なのかを認識できない」ということです。このチャート集は「統一規格」なので、値動きを認知する感覚が狂いません。

 

◆誰もが確認しておきたい長期の上げ下げ

つい、目先の動きにとらわれてしまうものですが、株価の長期的な波動は、意外に期間が長く、また変動幅も大きいものです。割と短期的なトレードを行う上でも、長期の上げ下げを見ておくことが重要です。

 

◆月足は黒、背景のケイ線はブルーの2色印刷

チャートは、人間の視覚を通じて感覚で値動きを捉えるためのものです。背景のケイ線が独自の工夫を加えたブルーなので、黒いローソク足がくっきりと浮かび上がり、値動きの観察を助けてくれます。

 

◆そのままでもバラしてもOK

レポート用紙や便せんのように、上端だけをノリで綴じてあります。そのままめくって眺めることもできますし、途中の1枚だけを外すことも可能です。
 
 

 

 

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