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安倍総理辞任 ~ビッグイベントに投資家はどう対応するべきか~
1.売買では「時間軸」が重要
押し目買いは成功するか──。
第2項のタイトルは、個人投資家がちょっと気になる言葉かもしれません。
でも、「押し目」とは?
いったい、どれくらいの期間で見た株価変動を指すのでしょうか。
多くの投資関連情報では、この点が非常にあいまいです。
「足元では……」という表現をよく目にしますが、いったい、どれくらいの期間なのでしょう。考えてみると、“なんとなく”話が進んでいるケースが多々あります。
そもそもの問題として、各種の相場解説が「1日」を軸にした短期間の事象を取り上げている点が挙げられます。個人投資家はふだん、「実際に売買する期間(数カ月または数年)と完全にズレた時間軸の情報を読まされている」のです。
次項から、「期間」を示しながら、押し目買い戦略について考えていきます。
2.基本的には押し目買いだが……
株式市場に対する私の見通しは強気、つまり、「上昇していく」と読んでいます。
ざっくり、3~4年は上げ傾向が期待できると考えている状況です。
第1項で「安倍政治の方向性は変わらない」という楽観論を示しましたが、マーケットが最も歓迎する菅義偉(前官房長官)が第99代内閣総理大臣に就任したことで、見通しの確信は強まりました。
安倍晋三前首相が辞任の意向を示した段階で、「次期総理は菅氏」と決まっていたようなものです。辞任の公表以降にメディアが報じた内容から、誰でも容易に想像できることでした。
すると、「株価は織り込み済み」とかたづけてしまいそうですが、菅総理は安倍政治を踏襲するだけでなく、独自のプランで安倍政治を加速させて仕上げの道に突き進むと考えられます。
金融緩和政策の継続は当然として、くしくもコロナ対策によって柔軟に動き出した財政支出について、いっそう力を入れていくことが予測できるだけでなく、就任前から「デジタル庁の新設」に言及し、行政改革を推し進めるべく、やり手の河野太郎氏を行政改革・国家公務員制度担当大臣に就任させました。
これまで日本株に興味を示さなかった著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社の株を買ったように、とことん売り越し姿勢をつづけてきた海外投資家が日本の株式市場に目を向けることが期待できます。
しかし、この見通しが見事に当たったとしても、数カ月単位で個別銘柄を見た場合、上がる銘柄あり、下がる銘柄あり、安値で動かない銘柄あり、と跛行(はこう)色が強くなるはずです。数カ月……例えば、「年末にかけて」とか、少し長めに「来春までの流れはどうか」とか、短めに「9月末から10月にかけてどう動くか」といった時間軸の話です。
すでに、3月の安値から6カ月間も大きく上昇した銘柄があります。その水準で落ち着いて再び上げていく場合もあるでしょうが、年末にかけて、あるいは来春にかけて下げトレンドをみせても不思議ではありません。年単位では上昇がつづくとしても、です。
3.自分の戦略よりも長めの期間に目を向ける
先に指摘したとおり、メディアの市況解説は、どうしても短期的な動きを取り上げます。
1日か2日、あるいは1週間か2週間の下げについて「買って大丈夫か」という観点で論じて「押し目買い」という表現を使うのですが、そもそも「押し目」の意味はなんでしょうか?
「押し目」とは、「上げトレンドにおける一時的な下落」です。
だから、例えば「安値から動き出した。3カ月くらいは上げトレンドがつづくだろう」という見通しがある状況で3カ月という想定期間が経過していない──このような前提があってはじめて、「この押し目を買うかどうか」といった言葉が生まれるのです。
外部の情報は、いろいろな面で「前提条件」が不明確です。
だから、安易に目を向けると混乱の原因にしかなりません。
常に、堂々と自分の予測を基準にするべきです。
実際、誰も明日の株価さえわからないのですから……。
さて、外部の雑音を無視したとしても、自ら落とし穴にはまる可能性は残ります。
つい、短期間の動きに目を奪われてしまうのです。
だから、意識的に長めの期間に目を向けようとする姿勢が大切です。
「今日買おうか、明日まで待とうか」と考えるときは、1週間か2週間の上げ下げに目を向けます。
3カ月間のトレンドについて予測するときは、1年か2年くらいさかのぼって、値動きの流れを確認します。
4.うねり取り
株価は、3カ月あるいは6カ月という期間で変動します。特別な材料がなくても、自律的に上げ下げする事実が観察できるのです。
こういった上げ下げで利益を取るべく、株価観測と自らの見通しを土台にして、臨機応変なポジション操作という技術を使って売買するのが、「うねり取り」と呼ばれる手法です。
うねり取りの手法は、一匹狼的な相場師が、コツコツと地味に利益を取るために古くから愛用してきました。それだけに、カンタンに説明できる基準がありません。
ここでは、うねり取りを“機械的判断”で実践するためのツール、「中源線建玉法」(ちゅうげんせん たてぎょくほう)のチャートを紹介します。
日々の終値を点で打ち、それを直線で結んだ「折れ線チャート」を用います。
すると、毎日の上がったり下がったりで、直線はジグザグになります。
このジグザグのパターン分析で、数カ月単位のトレンドが上向きから下向き、あるいは下向きから上向きに変化するポイントを探っていく基準が、「中源線建玉法」としてまとめられているのです。
※ルールに従って、「ここから上げ」と判断したら線を赤くし、「ここから下げ」と判断したら線を黒くします。
9984ソフトバンクグループ
最初は、話題性の高いソフトバンクグループ(9984)の中源線チャートです。
3月の安値から切り返した時、機敏に反応して陽転(黒→赤)しています。そして、8月の陰転(赤→黒)で買いポジションを手仕舞い(利食い)してドテン、カラ売りを仕掛けています。
9月にガクンと下げたところで、「上げを取って、下げも大当たり?」と思ったら急に切り返して再度、陽転しています。高値圏でどっちつかずの状況ですが、中源線に従えば、少なくとも迷って動けなくなったり(際限なく損が膨らむのがこわい)、慌てて情報を集めて混乱したりすることはありません。
ちなみに、「上か下か」を当てにいくと、こうした“相場あるある”のブレで意外な損失が出ます。そこで中源線は、ムリに予測を当てようとせず、3分割で慎重にポジションを増やします。
2つめの銘柄は、やはり大きく上伸した富士通ゼネラル(6755)です。
6755富士通ゼネラル
3月の切り返しで陽転し、4月に二番底をつけたあとグイグイと上昇しました。
裁量だと、途中で「今のうちに利益をふところに入れたい」と降りてしまうかもしれませんが、中源線は陰転するまで買いポジションを維持するので、このように値幅が発生したときに強みを発揮します。
その手前の上げ下げも、いい感じで反応していますね。
中源線は、なかなかおもしろい売買ツールです。
次項で、もう1銘柄、中源線チャートを紹介しましょう。
5.予測に固執する悲劇
最後に示す中源線チャートは、ずっと下げトレンドがつづいている銘柄です。
7014名村造船所
名村造船所(7014)は、すでに1年近くも下げ傾向です。
こういった個別株もあるので、やはり個々の動きに注意しなければならないわけです。
さて、名村造船所は、陽転(黒→赤)がことごとくダマシで損が発生しています。多くの投資家が「ここまで下げたから買っていいだろう」と考えて裏切られたのではないかと想像できますが、中源線はそんな“自分の都合”に縛られません。
条件に合致する上げの動きで「上向きになったか」と陽転を判断するのですが、まずは3分割の1単位だけしか出動せず、再び下げると判断したら「さっさと投げてドテン、カラ売りだ」と言ってくるのです。
「逆張りしなくちゃ」と強く思っていると、こうしたダラダラ下げで買い下がり、途中で「ヤバい」と感じながらもフリーズして塩漬け……損失が膨らむ状況を黙って見ているだけ、といった悲劇が起こり得ます。こういった現実から、見込み違いを認めて撤退することの重要性を再認識できます。
6.損小利大
前々項で、「中源線はムリに当てようとしない」と述べました。
ピシピシと予測を当てる術はありません。
だから、「当てよう」という気持ちで真剣に考えるものの、「予測は、臨機応変なポジション操作を確実に実行するための“基準”なんだ」と認識するのです。
儲けるために売買するので、勝って当然なのですが、およそ半分の確率で「負けても当然」です。負けのポジションを短期間でかたづけ、損を小さく抑える努力が求められます。
「押し目買いの状況だ」と判断して小さな下げで買ったら、新たな下げトレンドの入り口だった……上手下手に関係なく、こんな見込み違いが当たり前に起こるのが相場の世界です。
『損失は経費だ』と捉え、次のチャンスをモノにするべく撤退するのです。
それを示すのが、項のタイトルにした「損小利大」(そんしょうりだい)という言葉です。
そんな、プロの行動を機械的に示してくれるのが、中源線です。
経験が少ないと価値を感じ取るのが難しいかもしれませんが、ある意味、初心者向けといえます。字をきれいにするためになぞる、ペン習字のお手本のような存在です。
でも、シンプルな売り買いの行動を追究した結果、完成度が高くなっているので、プロが継続して愛用できる売買ツールでもあるのです。
だから、自信をもって紹介しているのですが、確固たる予測を立て、見込み違いを素直に認めて行動することができれば、オリジナルの取り組み方を構築できます。
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